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「げ」
驚きのあまり、思わず言葉が漏れてしまった。
もうそこまで気づかれてるとは。恐るべし。
卓球場抜けたことも怪我のことも気づくなんて、生徒に無関心だと思っていたのだけれど、裏切られた。
「適当に見えましたか」
「ああ」
即答、って。
私の右腕。肘から手首にかけて、ジャージを脱げばテーピングだらけ。
どうして二年間も隠し通したかっていう話をすると。簡単に、卓球部には暴君が二人いる。
部長と副部長の二人だ。
実力では入部した頃から私が一番なのに、二人のわがままのせいで勝つことを許されなくなった。
勝ったらハブ、次の日から練習相手はいない。
二人いないとできない競技の弱点だった。
それが何よりも悔しくて、最終下校時間を過ぎたあと、許可をもらって練習させてもらっていた。
もちろん、相手は機械。普段の部活の間は眠っている。
そんな理由で夜な夜な右腕を酷使しすぎて、ついには腱鞘炎になり、テーピング必須となってしまった。
だから、暴君相手に隠さないといけなくて、顧問には実力に気付かれないように練習でも試合でも、手を抜かざるを得なかった。
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