光について

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光について 小高い山の芝の上だった ぼくは寝転んで 太陽をじっと睨んでいた どうしてそうしていたのか覚えていない ただ芝のチクチクする痛みと草い熟れはおぼえている 光りは眩しかったたが 睫を通して見る光がいくつもの細い繊維のように 分かれていることに気づいた そして光りの一つ一つは数え切れないほどの 何色もの細かな光りであることに気づいた 理科の時間のことだったのか 暗幕を閉め切った実験室で 先生は 青い光りを当てれば物が青く見えること 赤い光りを当てれば赤く見えることを教えてくれた ぼくは当然すぎる事のように思えて思わず笑ってしまった 何がおかしいのかと先生はむっとした 赤、青、緑の三つの色の光りを同時にあてれば白くなる それこそ理科や美術の 教科書のとうりの常識かもしれない カラーテレビだって グラビアだって 細かい三つの光りの集まりなんだ でも絵の具の三色を混ぜれば黒くなる  美術の時間試しにやって ひどくがっかりしたのを覚えている 芝の上で みんなが常識と知っている科学の原理を さも自分が発見したかのようにぼくは 静かに感動していた そのときそばに友達がいたのか すぐ下に広がる町のざわめきも 季節のことも覚えていない
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