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「学年の先生同士で話し合った結果、皆さんの要望どおり好きな人同士で行動していいことに決まりました!」
担任の宮田先生の溌剌とした声が僕の耳にぐさりと突き刺さった。
スクールカースト圏内にとどまっている多くの生徒たちにとっては待ち望んでいた言葉なのだろうが、カーストの底からも外されてしまった、いわゆる「ぼっち」の僕にとっては、いちばん聞きたくない言葉だった。
くじ引きか先生が決めるか、名前順にして欲しかった――
不幸にも僕と一緒の班になってしまった人から嫌味を言われるのは覚悟していたが、それでも「好きな人同士」よりは、所属先を見つけなければならない手間が省けるだけ、いくぶんか気が楽だった。
僕が小さなため息をついたとき、
「但し、単独行動は禁止なので、必ず2人以上のグループで行動してくださいね」
想像してはいたが、恐れていた言葉が付け加えられた。
卒業旅行の行先は、1年中家族連れやカップルでにぎわう東京パラダイスランドだ。
それでも僕は、単独行動が許されるのであれば、ひとりで時間を潰すつもりでいた。
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