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 けれども、5時間目の始業時間が近づいて教室に戻ってみると、僕の席に誰かが座っていることも少なくなかったので、3年生になってからは好きでもない読書をして、席から離れないように心がけていた。  自分の席を占領している誰かに対して、どいて欲しいと言えるような立場にないのを心得ていたからだ。  どうしてこんな状況になってしまったのだろう―― 「一匹狼」と呼ばれる人とは違って、自分で望んで「ぼっち」にわけでもないのに、物心ついたときには僕と親しくしてくれる人は誰もいなかった。  幼稚園の頃のことはあまり記憶にないが、おそらく友達と呼べる人はいなかったように思う。  あるとき突然、副園長先生が気まぐれでやろうと言い出した“はないちもんめ”で、最後の1人になってしまったことだけは、今でも鮮明に覚えているからだ。  つまり僕は、あの頃既に誰からも欲しがられない存在になっていたらしく、中学3年になった今もその状況は変わっていないのだった。  友達ができない理由はいまだにわからないが、努力を怠ったわけでもないはずだった。  小学校の頃は、クラス替えがあるたびに、自分から積極的に声をかけたし、クラスメイトが困っているときには手を貸したりもした。  他の子が嫌がる仕事でも率先して引き受けたし、夏休みの飼育小屋のウサギの世話も、頼まれれば快く代わりを引き受けた。     
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