1人が本棚に入れています
本棚に追加
部屋に入ると、一つ大きく息をする
さすがに外も暗くなり、当然部屋も暗いけど灯りをつけることなく鞄をベットに放り投げ、机の椅子に座る
落ち着くと自然に窓の外に目線が向く
向かいの家を始め、折り重なる程の家々の窓の灯り
間隔の狭い外灯
その奥には数々の商業施設の灯り
人工灯が強すぎてその姿は見えないけど、あの空には星があるはず
椅子から立ち上がって窓を開け、隠されてしまった本当の空に心が向かう
「・・・今の季節、月があの位置なら」
何度もプラネタリウムで見た夏の星座を思い浮かべる
それが落ち込みが激しい時、いつもやっている私が一番穏やかな気持ちになれる儀式
けど、
「あれ?」
今夜は、どうしてなのか上手く思い浮かべる事が出来ない
「どうして?」
眼を閉じて、プラネタリウムの丸い天井を頭に再生する
と、
┈この真夏に熱いミルクティーか?┈
そんな声が再生された
「えっ?」
それは、今日会ったあの少年の言葉
あの妙に甘ったるい声がそのまま耳元に聞こえた気がした
勿論、実際に声として聞こえたわけではない
記憶の再生
それも、いつもの架空の会話でもない
あれは、自分が望む方向に想像しているのにこれは違う
┈また会ったらヨロシクな┈
ヨロシク、なんて言われるのに慣れていない
まぁ、あの人懐こそうな彼からしてみたら日常会話なんだろう
別に私に対して特別に言ったわけではない
「虚しいだけ、よね」
最初のコメントを投稿しよう!