星空の想い出

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星空の想い出

あれはいつだっただろう? まだ小学校にも入っていないくらいの頃だったと思う 真冬のキャンプ場 辺りに遮蔽物は無く灯りも無い為に空は大きく拡がり、まさに天然のプラネタリウム シーズンオフの為、他に人はいない こんな大きく綺麗な星空を独り占め出来るなんて、私はすごくラッキーだ この時の私は毛布に包まれて、父さんの膝に座って夜空を見上げていた 「ほら見えるか?北極星」 「どこ?分かんない」 父さんが指差す方を見上げてみても、どの星が北極星なのか分からない 図鑑みたいに線で繋がってくれていたら良かったのに 「なら、あそこの7つの柄杓の星は分かる?」 私は父さんの指の先を辿って見上げる 「あ、あった」 7つの星は直ぐに見つかった こういう形になっていると分かりやすい 「じゃあ」 父さんは胸のポケットから小さな手帳とペンを取り出すと、かじかむ手に息を吹き掛けてから手帳に柄杓の絵を描いた そこ内の2つの星の位置を示しながら5つ延ばすように描く 「こことここの星の長さをこっちに延ばしてごらん」 「うん」 私は本当の星でそれをやってみた 「1つ、2つ、3つ、4つ、5つ」 ちょうどそこに1つ、明るい光を放つ星があった その星は周りの星よりも光り、圧倒的な存在感でそこにいた 「あれが北極星なの?」 その星を指差しながら父さんの方を向き夢中で聞いた 「ああ、ようやく見つけられたな」 よくやった、と言うように父さんは大きな手で頭を撫でてくれた そして、父さんが見上げるのにつられて、私も一緒に北極星を見上げた 「昔の旅人は迷った時、あの北極星を見つけて方向を知ったんだぞ」 「そうなんだ」 「あの星は動かない、だからもし迷ったとしても北極星を探せば方向が分かるんだよ」 すごい星なんだと眺めていると、ふと思い付いた 「ねぇ父さん、北極星があるなら南極星もあるの?」 「え?南極星?」 父さんの驚いた声 「だって南半球で旅をした人もいたでしょ?その人達が迷った時目印になる星はあるの?」 「う~ん、どうかな」 父さんも分からないらしい 「帰ったら調べてみようか?」 「うん」
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