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「……さん――福田さん」
恐る恐る目を開ける。定まらない視界。病室に弱い光が射している。
「うなされてましたね」
モヤの中に見えた人影は、主治医の白衣だ。
「先生……悪夢を」
「クスリの時間ですよ」
彼は、茶色い薬瓶から白い錠剤を3粒取り出すと、俺の左の掌に乗せた。手首に巻かれた包帯が痛々しい。
「さぁ……痛みは、すぐに消えます」
促されるまま錠剤を含み、渡されたグラスの水と共に身体の奥へ流し込む。冷たい感触が、俺の中に溶けていった。
【了】
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