待つ妻

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 今日も遅いわね。  何時に帰って来るのかしら?  私はぼんやりと柱の時計を眺めた。針は数字の九を指し示している。外は真っ暗! もう、嫌になっちゃう!  そわそわする気持ちを落ち着かせるように、私は欠伸をひとつこぼした。こうすると気持ちが軽くなるの。昔からの癖。誰に教わったわけでもないけれど。こういうの本能って言うのかしら? いろんなこと、母に教わる前に私は遠くに……彼の元に来たのだから分からない。  あ。  遠くで彼の気配を感じた。  私は玄関から移動してリビングのソファーに飛び乗った。そして、寝たふり。だって、ずっと玄関で待ってたなんて思われたら嫌じゃない! 恥ずかしいじゃない!  それからどれくらい待ったかしら。彼のにおいがどんどん近付いてきて、玄関のドアが重い音を立てて開いた。 「花子ー。帰ったよー」  がさがさ。ビニール袋の音がする。またコンビニ弁当ね。身体を壊しても知らないんだから!  リビングに顔を出した彼を見て、今、気付きましたという顔をして私はようやく尻尾を振った。 「よしよし花子。良い子にしてたか?」  もう、いつまでも子供扱いしないでよ!  私は五歳。もう立派な大人……貴方の妻なんだからね!  それでも彼が頭を撫でてくれると、いろんな文句は飛んで行ってしまう。嬉しくて尻尾が揺れちゃうの。嘘が下手ね、私って。  世間ではこういうのツンデレって言うんでしょ? そんなの知らないわ。これが私の、柴犬の性格なんだから! くるんと巻いた尻尾を今日も貴方の為に振るわ。  おかえりなさい、私の旦那様!
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