第6話 接触

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第6話 接触

 突然、臨時の脳波伝達が発信された。それはビジュアルを伴う伝達で、各地の上空に現れた無数の物体を映し出している。  ビオトープに集まっていたボクたちも、空を見上げる。  空の至る所に漂う無数の物体。まだ遠く空の高い位置に見えるが、一つ一つがかなり巨大であることがわかる。キラキラと光るその巨大な物体たちは、轟音を立て、熱気を振り撒き、空気を揺るがしながら、ゆっくりと降下してきているようだ。  無数の物体の特に巨大な一つから、眩いばかりの光が散布された。その光は、空に広がり像を結んでいく。そして、空一面に巨大なイメージが浮かび上がる。  イメージの中には、三体の高等知能生物と思われる姿が映し出されている。  映し出された三体の生物は、まるでボクたちと同じような姿だった。比較的ノイル人に近い姿に見える。しかし、きっと何か、隠し持った能力があるはずだ。ボクは直感的に思う。  三体の生物が、何やら音声を発しだす。脳波伝達ではなく、音声伝達を使っている。様々な音程で、途切れ途切れに、発する音声。その音声は、次第に聞きやすく、意味のある言葉に変化していく。  どうやら、ボクたちに伝わるような音域と言語になるように調整しているようだ。  言語理解と、その調整能力を持つ生物。それだけでも、かなりの知能を持った生物であることが分かる。 『こんにちは、皆さん。今、皆さんには、我々の言葉が理解できていると思います』  確かに、理解できた。表現としては、間違っていない。 『我々は、この星の皆さんと出逢えたことを、心から喜んでいます』  どうやら、音声表現では、好意的な意思表示をしているようだ。しかし、何か違和感を感じる。 『我々は、太陽系第三惑星、地球という星からやってきました。皆さんは、我々地球人にとって、この大宇宙の中で巡り合う、最初の隣人です』  地球という星が、どこにあるのかは、わからない。でもなぜ、その星から外に出ようと思ったのか。なぜ、ボクたちのこの星を目指してきたのか。 「言語表現と精神表現が異なる生物だ。しかも、弱々しく不明瞭な個人意識と、狂信的で強力な種族意識が混在している……」  ミスランのその言葉を聞いたとき、ボクはドキリとした……。     
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