第1話 奴らがやってくる(接触まで、あと100日)

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第1話 奴らがやってくる(接触まで、あと100日)

 活発な日の光と静かな夜をもたらす空、豊富な食物を生み出す緑の大地、そしてその自然と意思を通わせる様々な種族たち。ボクらは、この地上で日々を過ごしている。  ボクの名前は、トゥルーン。この地上に住む種族であるノイル人の一人だ。 「奴らがやって来る」  そう言って空を見上げたのは、隣を歩くミスラン。  時々得体の知れない何かを感じ取るミスランは、へディライ人。鋭い感覚を持つヘディライ人の中でも、特別な能力を持っている。 「その奴らって、なんなんだ?」  ボクたちの後ろを歩いていたカイエルが言う。カイエルは、体の大きいマージェネル人。いつも見下ろされる格好で、見た目が怖いけど、ボクたちに優しい。 「わからないから、奴らだよ」  ミスランが、カイエルに答える。  ボクらは、ビオトープに向かっている。この地上には、いくつものビオトープがある。ビオトープとは、様々な種族が集まり、意思を通わせる共通の空間だ。  今日も、いつものビオトープを訪れると、みんなが集まっていた。ボクとミスランとカイエルは、食料を手に入れ、みんなの意思の中に加わる。様々な種族が意思を交わす中、ボクは考える。  こうして日々を過ごすことに、一体何の意味があるのだろうか、と……。  最近のボクは、気持ちが不安定で、何か変だ。今までは、こんなこと考えたりしなかった……。  もやもやとする気持ちの中、一際明るい声が聞こえてきた。 「あらぁ~。早いわね。もうみんな集まってるの?」  その声は、パンギア人のシャララ。シャララは、いつも眩しいくらいに光り輝いている。透き通るような肌、キラキラと光る瞳。  カイエルがおもむろに立ち上がり、シャララの方に歩み寄る。カイエルの意思を反映するかのように、まわりの空気の温度が少し上昇する。 「よう、シャララ。今日も眩しいな」 「熱苦しいよ。こっち来ないで」  カイエルが話しかけた途端に、シャララが冷たくあしらう。 「ハハッハー! お呼びじゃ、ねぇんだよ!」  木の枝に変な格好で腰掛けていたディバイが、笑い声をあげる。ヒョロリとして手足の長い、ビラディーク人のディバイ。粗暴で口が悪いが、どこか憎めないやつだ。 「おいおい、待てよ。オレ、今そんなに熱くないだろ……」  カイエルが話し出すと、またもシャララは素早く言葉を重ねる。 「アンタ、自分でわかんないの? アタシは、クールでスマートなのがいいの! 粗暴なのも嫌いよ!」  そう言いながら、カイエル、次にディバイを見るシャララ。 「粗暴って、オレのことかよ? ケッ!」  ディバイが乱暴に腕を振ると、近くの木の枝がポトリと落ちた。     
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