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第2話 存在意義(接触まで、あと80日)
日々を過ごすことに、何か意味はあるのか。そんなことを考え続けて、どんどん不安になってゆく。
その不安の原因は、ボクに何の能力もないことにある。
そう。ノイル人は他の種族と違い、この地上と意思を通わす能力を持っていないのだ。
ノイルは、一体何のためにこの地上に存在するのか……。
これまで感じたことのない、奇妙な感覚。なんだか、分からないこの気持ち……。
「トゥルーン……。気持ちが乱れてる……。奴らのせい……」
そうボクに言ったのは、鋭く独特の感性を持つミスラン。その特異性が故だろうか、ビオトープにいても誰もミスランに近付こうとしない。
そんなミスランを、ボクだけが気にかけ、いつもそばに居る。
そう思うと、落ち着く。何か心地よい……。自分の居場所を見つけたような気になる……。
ミスランとは、ビオトープ以外でも何かと行動をともにする。最近は、カイエルもボクたちと一緒にいる事が多くなってきた気がする。
ミスランやカイエルと一緒にいる間は、不思議とボクの不安な気持ちは落ち着いている。それも奇妙な感覚……。
ボクの気持ちは、どうなってしまったのだろう。
「どうしたんだよ、トゥルーン?」
声をかけてきたのは、ヒャダルゴ。ボクと同じノイル人。
ヒャダルゴも、ここ最近挙動がおかしい。何人かのノイル人や他の種族と妙な関係を作り出し、ビオトープ以外でも集まって行動を共にしている姿を見かける。
「どうしたって? 何がだよ!?」
「お前もなんだろ? 最近感じるんだ……。オレたちの存在意義ってやつを。」
ヒャダルゴの言葉に、ドキリとする。
存在意義?……。
ボクの気持ちがザワつく。傍にいたミスランがボクの腕を掴みながら、ヒャダルゴを睨みつける。
「ふん……。ミスランは、もうオマエのナカマなのか?」
ナカマ? ヒャダルゴの言葉が理解できずに戸惑うボク。
「何だそれ……? 何言ってんだ、オマエ?」
「ノイルの存在意義だ……」
ヒャダルゴのその言葉を聞いた瞬間、ボクの心が掻き乱されるのが分かった。
「そんな所で集まって、何してんのアンタたち?」
遠くの方から声をかけられて、振り返る。シャララだ。ボクたちの方に近付いてくる。
「なあ、シャララ。オレたちのナカマにならないか?」
シャララに向けて、ヒャダルゴが発した言葉。
ナカマ……? ナカマだって……?
ボクはその言葉に驚いて、ヒャダルゴを見る。しかし、先に口を開いたのはシャララ。
「はぁ? ナカマ? 何それ? しかも、オレたちって? つまりは、アタシと意思を通わせたいってことでしょ? それなのに何、オレたちって? アンタのことでしょ? 意味がわからないわ?」
矢継ぎ早に捲し立てるシャララ。ヒャダルゴもタジタジだ。目が泳いでいる。そんなヒャダルゴに、シャララは更に追い討ちをかける。
「アンタ、最近何か変よ。そのナカマだか何だかと居ることで、アンタ自身を保っているみたい」
シャララの言葉は、ヒャダルゴに向けられたものだったけど、それを聞いたボクは、心の中で震えていた。
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