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イコが皇太子殿下に見初められてから一月ほど経ち、再び薬の買い付けに出かける頃合いになった。行けば必ずイコの宿屋に泊まることになるので、本音を言えば行きたくはなかったのだが、そういうわけにもいかなかった。
どうせイコにはもう会えない。彼女は宮殿に召されただろう。そんなふうに考えていたのだが、イコは以前と変わらず宿屋で働いていた。話を聞くと、まだ使いは来ていないらしい。
いっそのこと、イコとは会えない方が良かったのかもしれない。そのせいで私は未練を捨てきれず、さらには、以前よりも生き生きとした彼女の顔を見て胸を痛めることになったのだから。
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