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季節が一回りしても、依然としてイコは宿屋にいた。さすがに殿下と出逢った頃の浮ついた様子は消え失せ、昔と同じようにけなげに働いていたが。
私は彼女と話す内につい、「殿下はもう忘れてしまわれたのではないか」、「他にもお妃様がいらっしゃるのだし」というようなことを言ってしまった。
「私はいつまでも待ち続けます。殿下を信じていますから」
言い返したイコの瞳は、強い信念と私への怒りを湛えていた。彼女の心の中に私の入り込む余地などない。その事実を突きつけるかのように。
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