コンテニュー

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コンテニュー

 アティリッタ湖のほとりに一軒の宿屋がある。古めかしい石造りの二階建てで、客室は十もない。私は薬売りの父に連れられ、月に一度はそこに宿泊したものだった。薬の買い付けに出かける際、街道沿いのその宿屋で行きに一泊、帰りに一泊すると日程的に丁度良かったのだ。  宿屋には美しい少女が働いていた。主人の娘で、名をイコといった。歳は私の一つ下。いつも赤毛を三つ編みにし、細い体をせっせと動かしていた。  定期的に宿泊していたこともあり、イコは私の顔も、スリンガという名前も憶えてくれていた。おとなしい娘ではあったが、宿を出る時はいつも笑顔で見送ってくれたものだった。  思春期の私がイコに心を奪われたのは必然だったと言えるだろう。  大人になったらイコに求婚しよう。少年時代の私は勉強をしながら、あるいは父の仕事を手伝いながら、そのことばかりを考えていた。もっとも、子供らしく結婚した後のことなど何も考えてはいなかった。ただ純粋に彼女と結ばれたいと願っていたのだ。  しかし、私が十七歳になった春、イコの運命を決定づける出来事が起こってしまう。
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