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一人の少年がいた。その子は、幼くして両親から捨てられ、分かっていたのは自分の名前くらいなものだった。尤も、それすら手紙で知ったのだが。
少年の名前は新本世那、彼は物心付く前に拾われた。
(そろそろ兄さんたちかえってくるかなあ)
世那には義理の兄が3人いた。
1人目は新本宙といい、弁護士の職についている青年で、温和な性格。
双子の弟である天に対しては毒舌を発揮する。
2人目は、新本天。宙の双子の弟だ。医者をしているが、宙とは仲が良くない。
口が悪いが、世那の良き相談相手である。
3人目は、新本蓮音。彼はまだ高校生で、一見無表情で近づきにくいが、実は家庭的な一面もある頼れる兄だ。
その日は兄達の帰りが遅かったため、世那は玄関前で待っていた。
何分待っても、帰ってこないので玄関の近くにあるメッセージボードをみた。
新本家では職業柄、帰宅時刻にばらつきがある。
その為、新本家ではメッセージボード制を採用していた。各自が、帰りが遅くなる旨や夕食についての希望をメモに書き、ボードに貼っておくのだ。
(たしかにべんりだよね)
しかし、世那は、このメッセージボードがあまり好きではなかった。
自分に分からない言葉、読めない漢字。かなりの年の差がある世那と兄達では、仕方のないことなのだろう。だが、世那はどうしても疎外感を拭うことができなかった。
【せな、こんどケーキかってくるけど、なんのケーキがいい? 天 】
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