第1章  新本家

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一人の少年がいた。その子は、幼くして両親から捨てられ、分かっていたのは自分の名前くらいなものだった。尤も、それすら手紙で知ったのだが。 少年の名前は新本世那、彼は物心付く前に拾われた。 (そろそろ兄さんたちかえってくるかなあ) 世那には義理の兄が3人いた。 1人目は新本宙といい、弁護士の職についている青年で、温和な性格。 双子の弟である天に対しては毒舌を発揮する。 2人目は、新本天。宙の双子の弟だ。医者をしているが、宙とは仲が良くない。 口が悪いが、世那の良き相談相手である。 3人目は、新本蓮音。彼はまだ高校生で、一見無表情で近づきにくいが、実は家庭的な一面もある頼れる兄だ。 その日は兄達の帰りが遅かったため、世那は玄関前で待っていた。 何分待っても、帰ってこないので玄関の近くにあるメッセージボードをみた。 新本家では職業柄、帰宅時刻にばらつきがある。 その為、新本家ではメッセージボード制を採用していた。各自が、帰りが遅くなる旨や夕食についての希望をメモに書き、ボードに貼っておくのだ。 (たしかにべんりだよね) しかし、世那は、このメッセージボードがあまり好きではなかった。 自分に分からない言葉、読めない漢字。かなりの年の差がある世那と兄達では、仕方のないことなのだろう。だが、世那はどうしても疎外感を拭うことができなかった。 【せな、こんどケーキかってくるけど、なんのケーキがいい?  天 】
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