第三章 戦国時代の冬

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隠岐為清が亡くなり清家が隠岐家の当主になった事は小次郎達にも知らされた。 為清が亡くなった事を宗信から聞いた小次郎は少し暗い気分になった。 死因からすると毒を盛られたとの見方が強いと噂されている。 小次郎は自分が盛った毒が原因で死んだとすぐに分かった。 それと同時に『人を殺した罪悪感』を感じた。 しかし、小次郎が隠岐為清に毒を盛ったのは鹿之助しか知らないのだ。 これが他の尼子家臣に知られたら小次郎の信用ががた落ちだ。 罪悪感を感じて気分が暗くなっていても周りにはいつも通りの表情、雰囲気で振る舞っていないといけない。 特に小次郎と親しい秋上宗信は人の表情や雰囲気を良く見ており、ちょっとでも気分が暗いとすぐに何かあったのかと聞いてくる。 尼子家臣団でこの秋上宗信にだけは毒を盛ったのを知られてはならない。 小次郎はなぜかは分からないが宗信にだけは嫌われたくない、見捨てられたくないと言う気持ちになるのだ。 「どうかしたんですか?なんか元気無さそうに見えますけど…」 宗信は俺の気分の暗さに早速気付いてきた。 「あ、いや。ちょっと寒くてな。風邪気味かも。」 「風邪気味ですか…。確かに今日は寒いですもんね。じゃあ今日のお夕飯は栄養満点の暖かい鍋料理にします。」 そう言うと宗信は食材を買いに出掛けた。 宗信は勘が鋭く、気の利く良い娘なんだが隠し事がすぐにバレそうでちょっと怖い。 しかし、それだけ俺の事を見ていると言うことなのかも知れない。 俺はタイムスリップする前の現実世界では女の子と深く関わったことがないから、俺をちゃんと見てくれている女の子が居てくれて少し嬉しい。 現実世界よりも戦国世界の方が充実している事に俺はタイムスリップして良かったと思う。 たぶん、俺は現実世界で生きていたら社会の荒波に誰にも助けてもらえずに苦しんでいたかもしれない。
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