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その時である。明石軍に動きが出た。
「我らがいくらやる気がなくても、攻めてくるのなら討ち取らねばならぬのぅ」
明石軍の後方から現れたガタイの良い騎馬武者。それを見て明石軍の全兵が視線をその騎馬武者にやる。
「明石景親様ァ!」
この男の登場により兵は凄い雄叫びあげ、場の雰囲気は最高潮となった。
「明石様!たった今、こちらへ攻めて来た尼子の軍の後ろを取りました!恐らくすぐに全滅でしょう!」
部下の話を聞いた直後、「甘いわっ!!」と大声をあげる。
「貴様らはまるで敵をよく見えとらん!あの隊の先陣を切っている若者が目に入らんのか!?」
明石は遠く離れた陣からでも目立つ派手な鎧の佐世正勝を指差す。
「あの者がこそが、あの隊の指揮官だ。その理由にあの者の後を追う兵の士気が尋常ではない。」
しかし、それでも背後を取っているのだ。いくら士気が高くても挟撃されては一溜まりも無いだろう・・・と思う部下達。
「良いか?兵力に勝るのは士気の高さと策の精度だ!あの若者は自ら危険な目に遭い、更に士気を上げる、そして後ろから必死でついてくる者の勢いを付けているのだ!それこそがあの者の策!勢いに任せた力攻めだ!」
「そ、それでは下手に攻めるのでは無く鉄砲などで狙撃するしかないのですか?」
強く断言する明石に恐る恐る進言する部下。
「ああ、既にそういう指示を出しておる。そして、我らを舐めた事を後悔させてやる!」
明石は『やる気がないだろう』と思って攻めて来た正勝が非常に気に入らない様子。
「静観するのを辞めるぞ!ここの部隊全軍であの若者を討ち取る!行くぞ!!」
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