佐世正勝対『浦上の四神』明石景親

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正勝の部隊はただ勢いに任せて前に進む。この勢いで強引に攻める戦い方に明石の部隊、その前衛は大きく足並みを乱した。 「なんか三村の部隊より弱いな!」 「ヤル気がないんじゃねーのかぁ?」 正勝の部下が言うとおりである。他の部下も戦いやすそうに前に進む。 正勝自身も明石の部隊と戦っていて、三村の部隊と兵の精練度違いすぎてビックリした。 (あー、そうか。なるほどね。コイツら戦慣れって言うか・・・乱戦慣れしていない。普段から策で嵌め殺す戦術を取っているからなんだろうね) 正勝の思っていた通りである。浦上の武将は主に謀略・策略に長けた知将が多い。その為、力攻めを好まず策に嵌めて殲滅する戦いを好んでいた。 つまり今、正勝が力攻めしているのは『勝つにはこれしかない』という戦い方なのだ。 「明石景親はどこだ!」 正勝の配下が明石を必死に探す。正勝の予想では一番後ろの見晴らしの良いところの陣で静観しているという事であった。 しかし、正勝の読みはここで外れる事となる。 「そこか、我を舐めた若者は・・・!」 奥から立派な鎧兜を装備した武者が現れる。 「我は明石景親!浦上の四神なりっ・・・!」 この声を聞いて、戦場にいる明石の兵、正勝の兵、共に明石の方を見る。 そして、次の瞬間に明石から異様な空気を感じた。 これが四神と呼ばれ、備前で恐れられる名将。その男が現れるだけで場の空気が重くなり、息苦しくなる。 そう、まるで気を抜いたらすぐに殺されてしまう、そんな空気。 それと同時に明石の軍からは大きな歓声が上がる。 名将の出現、ただそれだけで士気が跳ね上がる。 『浦上の四神明石景親』とはそれほど浦上家中で信頼されている武将・・・英雄なのだ。
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