意地悪して、ごめんな

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 お湯を器に注ぐと、注意しながらテーブルに運ぶ。そこでようやく二人は椅子に座り、スプーンを握った。 「いただきます」 「はい、めしあがれ」  旨い旨いと言いながら、直哉はスプーンを口に運ぶ。それを満足そうに、和也が見つめていた。惚れ惚れする食いっぷりの良さに、和也は何度見ても気持ちがいい。 「和也、原稿の方はどうなんだ?」 「あ、あ……」  和也は気まずそうに、目を逸らした。  和也は、売れっ子のBL小説家だ。しかも、和也と直哉をモデルに書いている。以前モデルにするのはもう止めようと誓ってはみたが、すると全然書けなくなった経緯がある。別段直哉も気にしてはいないので、そのまま書き続けることに決まった。  その時とは違う様子に、直哉は詰め寄ってみる。咀嚼していたものを飲み込んでしまうと、行儀が悪いのは承知でテーブルに頬杖をついた。そして真剣なまなざしで、もう一度問う。 「うまくいってないのか?」 「そう言う訳じゃないんですけどね」  どうやら、言いにくいというよりは、恥ずかしいという気持ちらしい。頬は赤らめてはいないものの、手を弄ぶ仕草はまさにモジモジという効果音が似合う。 「またちょっと、直哉さんの手を借りなくちゃいけないかもしれません」 「ほう……」  以前も何度か、シチュエーションプレイと言う奴をやって和也の創作意欲を刺激したことがある。それと同じことを求められているのだと、直哉はすぐに気が付いた。 「で、どんなのやんの?」 「実はですね、今度雑誌全体ででSM特集をやることになってまして」 「ほう、SMね」  直哉はよく、セックスの時に和也を焦らしたりして意地悪をすることはある。しかし本格的なSMというのは、やったことはなかった。いい経験になるかもしれない。そう直哉は承諾の言葉を口にする。 「いいじゃん、面白そう」 「あぁ、よかった」  和也のことだから、引かれてしまうのではないかと心配していたのかもしれない。  直哉の次の休みを確認して、その日に実行する事でこの話は終わった。
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