意地悪して、ごめんな

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 和也が起きると、寝ぼけている頬にキスを一つ落とした。状況がわからなくて混乱している和也をよそに、「おはよう」と挨拶をする。 「……おはようございます」 「今日は晴れるらしいぜ」 「じゃあ、洗濯しないとですね」  もう少しじゃれていようとも思ったが、そうするといつまでもベットから出られないような気がしたので、勢いよく掛け布団を剥がした。  春とはいえ、まだ少し朝は寒い。珍しく直哉が台所に立つと、お湯を沸かし始めた。マグカップを2つ用意して、スープの素を入れる。 「何があるっけな?」  いつもなら卵かけご飯なのだが、なんとなくそんな気分にならない。 「簡単卵丼でいっか」  直哉はそう独り言をこぼすと、卵を2つ取り出した。それから、常備している明太子も出す。  簡単卵丼とは、卵に明太子とマヨネーズを混ぜて焼いたものを白飯にかけるだけというズボラ飯だった。  さっと簡単に作ってしまえば、テーブルに運んで和也が洗面所から出てくるのを待つ。直哉もまだ顔は洗っていないが、どうせ後で風呂に入るからいいやと言う考えだった。  和也が入ってくるまでの間、テレビの電源を入れると朝の情報番組が流れていた。この前発覚した芸能人の不倫騒動が大きなパネルで解説されていく。  なんとなく眺めていると、和也がダイニングに戻ってきた。用意されたいる朝食を見て、ただ素直に感謝の言葉を口にする。 「直哉さんのこういうご飯って、どこで覚えるんですか?」 「友達がやってるの真似たのとか、ネットで検索したレシピを簡単にしたやつとか」 「美味しそうです」  二人は食べながら、今日のスケジュールについて軽く確認する。午前中は洗濯物と皿洗いをして、お楽しみは2時頃から始めようということになった。
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