Vanishing White

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「まじでなにもない場所だよなここ。」 堤防の上から見下げる海は、荒涼として寂しいものだった。 冬の鈍色な雲の下に広がる海は、空の色を写すかのように黒々していた。 よせては返す波は、汚いゴミであふれてており、空き缶、ビニール袋、食べ物の残骸、プラスチックのゴミ、この世の汚いものが全てここにあるかのような光景だ。 「ここにきたいっていったの壱、お前だろ。」 バイクを路肩に止めた創二が白い息を吐きながら歩いてくる。 その手には自販機で買ったのだろう、缶コーヒーを持っていた。 「ほら、風邪ひくから堤防の上から降りろよ。風モロに当たるだろ。」 海から吹く風は確かに冷たい空気を纏い、俺の肌を射す。 幼少期から嗅いでいた海の生物たちの死骸の匂いが、俺の鼻についた。 ほろ苦い淋しさと、乾いた滑稽さを感じる匂いだった。 創二が缶コーヒーを俺に手渡すが、俺はそれを受け取ると創二の忠告も聞かずそのまま海を眺めていた。 「さっきのツーリングでもうすでに風は死ぬほど浴びたからな。これぐらい楽勝だ。」 「バイクの風は気持ちいいだろが。冷たい空気を突っ切るって感じで。」 「ライダーの気持ちはわからんわ。ただ寒いだけだろ。」 反論する創二を無視し、俺は缶コーヒーを飲む。 創二に強がっては見せたがやはり身体は冷えており、温かいコーヒーが身体に染み渡る。 「しかしいつみても汚いな。」 創二もまた堤防をよじ登り、俺の隣に立つ。 俺より頭一つ分高い創二はライダースを着てバイク乗りという恰好をしていた。 それに比べて俺は防寒対策を優先してただのダウンジャケットだ。 創二はアルバイトをして自分でバイクを買って、整備してどこか遠くへ一人でツーリングしている。 こいつは俺より一歩、いや十歩先も先に進んでいるような気がしてならなかった。 そんな考えを払拭したくて、俺は子供のころの話を創二にふる。
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