Vanishing White

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創二は何も言わず缶コーヒーを飲むと、空を見上げた。 俺もつられて空を見る。 鈍色の空で、今にも雨が降りそうな、この陰気臭い町に似合う天気。 「気分悪くしたなら謝る。」 「いや別にいいんだよ、だっていちいち相談することでもないしな。」 「……こんな小さい町だと、噂っていうのはすぐに広まるもんだ。」 「まあな。お前がバイク買ったっていうのも隣近所のじーさんばーさんまで知ってたしな。」 「プライバシーもなにもねえとこだよな。」 俺は視線を足元に戻す。 灰色の空を反射して静かに波打つ海は、俺達が話している間も同じことを繰り返している。 俺も、高校を卒業して、親父の喫茶店を継ぐことになったら親父のように同じ毎日をずっと繰り返すのだろうか。 それに気づいたとき俺はなんだか恐ろしくてどこか遠くへ行きたい焦燥に駆られて、 創二を呼び出しこの海に来ていた。 ――――――この海に来たのは、逃避だった。 「お前に、言えなかったのは。」 創二が空から海に視線を戻し、ポツリとつぶやいた。 「その話は終わったろ?別にいいって。」 お前が俺を同等と見てなかったことはお前のせいじゃない。 考えなしの子供の俺を、馬鹿にしてたんだろ? そう嫌味をいいたかった、けれど俺のなけなしのプライドがその情けない台詞を止める。 「お前に話すと、決心が揺らぐ気がしたんだ。この町から出たくなくなる。」 「……なんで。」 「別にいいんだよ、わからなくて。」 創二は飲み終わった缶コーヒーを手でつぶす。 「この小さい町じゃさ、きっとすぐに広まる。そうしたら俺はこの町で生きていけなくなる。俺はさ、故郷のこと嫌いになりたくないんだよ。」 白い息とともに吐きだされた創二の本音の意味を、俺は理解してはいけない気がした。 頭の中のアラームがそれ以上聞くのはやめろと叫んでいる。 けれど俺はそれを無視した。
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