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「創二、俺。」
「お、雪降ってきた。」
俺の言葉を遮るかのように、場違いなほど創二は明るい調子で言った。
創二の言う通り、雪が空からパラパラと降ってきていた。
「空から落ちてきてるときは綺麗なのになあ。地面に落ちると砂と混ざって汚いんだよな。」
雪の結晶が灰色の海の上に落ちてすぐ消えていく。
海の上に白い雪は積もらない。
積もることもなく、消えていってしまう小さな雪の結晶達。
「休みの日には帰ってくるから。そのときまた遊ぼうぜ。」
創二は笑いながら俺にそう言った。
その顔は屈託なく、笑っていた。
「……ああ。」
冷たい風が俺達の間を通り抜ける。
俺はそのとき、もう二度と二人でこの海に来ることはないだろうと思った。
きっと俺達二人は卒業まで、なにごともなく過ごしていくのだろう。
ふわふわと降る雪が、俺には煩わしかった。
早く、全てを溶かす雨になってほしいと、強くそう思った。
この気持ちも、やるせない思いも全て、雪のように消えてくれることを願って。
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