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その日は雨上がりだった為か、新緑がキラキラと眩しい土曜の午前だった。
この病院は土曜の午前診療を行っていて、
年老いた外来患者がところ狭しと待ち合い室の、ソファに腰掛けていた。
もう何十年と経っている病院だから、
辺りには病院独特の薬の匂いが充満していて、緑の革張りの待合室のソファも年季が入っていた。
ちょうど、私は午前診の担当で忙しく、先生から呼ばれる患者さんの対応に当たっていた。
「瀬尾さん、ちょっと良いかしら?」
育休明けの弥生先輩が私を手招きしている。
先輩の元に近寄ると、
「ごめんね、ウチの娘また熱出しちゃって。今から保育園に迎えに行かなきゃあかんのよ」
申し訳なさそうに顔を見上げる弥生先輩に対して、ちょっとだけ、またか…と思ってしまったけれど子どもの事なら仕方ない
「良いですよ、迎えに行ってあげてください」と先輩を送り出した。
「ごめんねっ、今度埋め合わせ絶対にするから!」
その絶対は来ないだろうな…と思いながらも、軽く手を振り
「しゃーない、やるかぁ」と軽く伸びをし
待合室に戻ったところ
珍しい両髪をお下げに結った6歳前後の女の子が、ちょこんと椅子に俯いたまま座っていた。
ここは内科やし、小児科と間違えたのかな?と感じ
「ここで待ってるの?お母さんは?」
と声を掛けた。
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