第2章 病棟内の噂

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その日は雨上がりだった為か、新緑がキラキラと眩しい土曜の午前だった。 この病院は土曜の午前診療を行っていて、 年老いた外来患者がところ狭しと待ち合い室の、ソファに腰掛けていた。 もう何十年と経っている病院だから、 辺りには病院独特の薬の匂いが充満していて、緑の革張りの待合室のソファも年季が入っていた。 ちょうど、私は午前診の担当で忙しく、先生から呼ばれる患者さんの対応に当たっていた。 「瀬尾(せお)さん、ちょっと良いかしら?」 育休明けの弥生先輩が私を手招きしている。 先輩の元に近寄ると、 「ごめんね、ウチの娘また熱出しちゃって。今から保育園に迎えに行かなきゃあかんのよ」 申し訳なさそうに顔を見上げる弥生先輩に対して、ちょっとだけ、またか…と思ってしまったけれど子どもの事なら仕方ない 「良いですよ、迎えに行ってあげてください」と先輩を送り出した。 「ごめんねっ、今度埋め合わせ絶対にするから!」 その絶対は来ないだろうな…と思いながらも、軽く手を振り 「しゃーない、やるかぁ」と軽く伸びをし 待合室に戻ったところ 珍しい両髪をお下げに結った6歳前後の女の子が、ちょこんと椅子に俯いたまま座っていた。 ここは内科やし、小児科と間違えたのかな?と感じ 「ここで待ってるの?お母さんは?」 と声を掛けた。
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