第2章 病棟内の噂

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その子は相変わらず俯いたまま、 「大丈夫…ここでお母さん待ってるから…」とか細く今にも消えそうな声で話した。 なぜか背筋がゾワっとした私は 作り笑いをしながら、 「そっか、分かった。 また何かあったら言ってきてね」とその場を立ち去った。 「ねぇ…お姉ちゃん」 その子は背を向けた私に向かって 「もし、夢の中で暖かいものちょうだい…って誰かが言ってきたら、良いよって絶対言ってあげてね。絶対だよ…」と話しかけてきた。 怖くなった私は、振り返ることなくその場を後にしてしまった。 その夜…夢を見た。 白い(もや)の中、白いノースリーブワンピースの肩まで伸びた長い黒髪の女性が、 「寒い…寒い…」と言いながら 手を伸ばして私を求めてくる。 最初は靄がかかっていて、 ハッキリとは分からなかったがその女性が近づくに連れ ハッキリと血眼(ちまなこ)になって、 青白い女性が私の方をめがけ、手を伸ばして私の腕を掴んでくるのがわかった。 「ヒッ…」 身震いがするとはこの事なのか… 私は全身に鳥肌が立つのを覚えた。 そのとき 「寒い…寒い…暖かいのちょうだい…ちょうだい」と手を伸ばしてきた女性に 昼間出会った女の子の話を思い出し、 「いいよ」というと、 そこでハッと目が覚めた。 私は日勤業務を終え、買い物を済ませた後 、ウトウトと部屋のソファで眠ってしまったらしい。 全身冷や汗だらけで、なぜか腕がものすごく冷たかった。 額に手を当て、 「夢か…」と独りごちたが、 手首にはしっかりと掴まれた跡が残っていた。
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