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その子は相変わらず俯いたまま、
「大丈夫…ここでお母さん待ってるから…」とか細く今にも消えそうな声で話した。
なぜか背筋がゾワっとした私は
作り笑いをしながら、
「そっか、分かった。
また何かあったら言ってきてね」とその場を立ち去った。
「ねぇ…お姉ちゃん」
その子は背を向けた私に向かって
「もし、夢の中で暖かいものちょうだい…って誰かが言ってきたら、良いよって絶対言ってあげてね。絶対だよ…」と話しかけてきた。
怖くなった私は、振り返ることなくその場を後にしてしまった。
その夜…夢を見た。
白い靄の中、白いノースリーブワンピースの肩まで伸びた長い黒髪の女性が、
「寒い…寒い…」と言いながら
手を伸ばして私を求めてくる。
最初は靄がかかっていて、
ハッキリとは分からなかったがその女性が近づくに連れ
ハッキリと血眼になって、
青白い女性が私の方をめがけ、手を伸ばして私の腕を掴んでくるのがわかった。
「ヒッ…」
身震いがするとはこの事なのか…
私は全身に鳥肌が立つのを覚えた。
そのとき
「寒い…寒い…暖かいのちょうだい…ちょうだい」と手を伸ばしてきた女性に
昼間出会った女の子の話を思い出し、
「いいよ」というと、
そこでハッと目が覚めた。
私は日勤業務を終え、買い物を済ませた後
、ウトウトと部屋のソファで眠ってしまったらしい。
全身冷や汗だらけで、なぜか腕がものすごく冷たかった。
額に手を当て、
「夢か…」と独りごちたが、
手首にはしっかりと掴まれた跡が残っていた。
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