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「でも、これ以上は危険なの!」(イチオウケイコクハシマシタヨ)
「何を言っているんだ」
「だから私に近づかないで」(ダカラヒトハオロカナンダ)
必死に抵抗する私の忠告も聞かずに、
とうとうその客は私に触れてしまった。
そんなつもりじゃなかったのに。
純粋に私の歌だけ聞いてくれればよかったのに。
間に合わなかった。
イタダキマス。
久しぶりに口にしたその食べ物は、確実に私を心の底から満たしてくれた。
ごちそうさま。
ありがとう。
余分は頂きません。
必要な分だけ、頂くの。
だから私はもうおなかいっぱい。
今度は心の底から歌うよ。
空腹の時とは違って、満たされた時の声は艶があって格段に違う。
「素敵な歌声だね」
また誰かが私の歌を聞いてやってきた。
「ところでさ、さっき僕の友達を見なかったかい?」
「え、知らない」本当は知っていたけど、もう食べちゃった何て言えない。
「さっきからずっと待っているんだけど来ないからさ」
「待つのはお互い大変ね」
私は笑いながら答える。
「よかったら私の歌を聞きながら待っていたら」
「そうすることにするよ」
私はまた空腹になるまで歌い続ける。
今日も明日もあさっても。
だって私は何百年も生き続ける人食い花だから。
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