ユウワク

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ユウワク

 おなかがすいて死にそうだ。  さっきから頭に浮かぶのはおいしそうな食べ物ばかり。  アレも食べたい!これも食べたい!それも食べたい!  でも私の場合、ひたすら待つしかないんだよね。  今年は、天候不良なのかな。  いつもより食べ物が少ない。  こういう時、空を自由に飛べる鳥が本当に羨ましい。  自由に動けない私は、生まれ変わった鳥になりたい!と心底思った。  空腹を紛らわす唯一の方法は歌う事。  今日も心の赴くままに声を出す。 「素敵な歌声だね」いつものように誰かが私に話しかける。 「もっと近くで聞いていいのよ」と私。 「じゃあ、遠慮なく近くで聞かせてもらうよ」  私は空腹なのも忘れて、たった独りの為の観客に心を込めて歌った。 「素晴らしい!」拍手をしながら、気がつくとその客は私の目の前にいた。  あとほんの少しで私に触れる距離まで近づいていた。  歌い終わると猛烈な空腹が襲って来た。  そんな私の気持ちなんか気づかずにその客はもっと私に近づいてくる。 「だめ!それ以上近づいては」(ワタシノワナニハマッテシマウヨ) 「何で?さっきは近づいてもいいっていいましたよね」     
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