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『……ののー。……のの?』
『……おーい "のの" 。いつまで寝てるの?』
『……うちのお姫さまはお寝坊さんだね』
『……ののー。早く起きないと約束の時間に間に合わないよ』
どこか懐かしさを感じる声が聞こえてくる。
でも、よく聞こえない。誰の声か分からない。
『別に遅れたっていいんじゃねぇか?大体、 "約束" なんてただの口約束だったしな』
ーーっ。
夢の中のようにぼんやりとした意識の中、唯一はっきりと私の耳に届いた声は私を捨てた男の声だった。
声を聞いただけでギュッと締め付けられるほど息苦しくなった喉と身体に酸素を取り込もうとしてパクパクとせわしなく唇が動く。
ちっとも楽にならない呼吸を整えようと慌てて息を吸い込む。塊で入って来た空気にまた喉が驚いてゲホゲホとむせこむように咳が出た。
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