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と、いうのも足元には大穴が開いていたからだ。直径は四尺半はあろうか。深さは人一人よりも高さがあるだろう。
その穴の底には柔らかな土がかぶっていたが、その土の一部がうごめいたので、大将はドキリとする。よくよく目を凝らしてみると土にまみれた大きな角や栗の皮のような色をした羽の部分が見えた。土の下で大きなカブトムシがもがいていた。どうやら先ほどカブトムシが消えたと思ったのは、この穴に落ちたせいらしい。
「お前たち、こいつを埋めるつもりか?」
大将は男二人に尋ねた。先程からせっせと土をかぶせている二人の行動が飲み込めてきた。
「見ての通りですよ。」
踏み鋤を持った男が土を掛ける手を止めずに答える。
「お前たちがこの穴を掘ったのか?」
大将はさらに尋ねる。
「ええ。銃も効かないような体でも、埋めてしまえばさすがに這い出てこれないかと思って。」
鍬を持った方がちらりと大将を見て答える。しかし、踏み鋤の男と同様手を止めることはない。
そして、土はカブトムシの角の先まで見えなくなるほど、掛けられた。そこまで土を掛けると踏み鋤の男が穴の中へ飛び降りた。そして、土の上を踏みしめながら歩く。どうやら土を押し固めているようだ。
だが、あるところに足を下した途端、男はぴょんと飛び跳ねる。
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