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大将や彼が引き連れてきた兵は日頃より武芸を嗜み、鍛えているし、戦も何度か経験している。それにも関わらず、彼らは巨大カブトムシ相手に苦戦してしまった。それに対して、傳次郎と遼太郎の二人は戦に駆り出されたこともなさそうな若い農民だ。彼らはたった二人でカブトムシに立ち向かい、勝利したのだ。それなのに大将の兵たちときたら、カブトムシに迫られて逃げ出す始末。大将は自分を含めて情けなさを感じていた。
しかし、それを嘆いていても仕方ない。それよりも、この二人が現れたことを喜ぶべきだろう。大将は頭を振って気持ちを切り替える。
「よし、そなたたち二人の腕を見込んで一つ頼みがある。」
大将は自分の考えを固めると口を開いた。
「何でしょう?」
傳次郎は突然のことにきょとんとする。
「お前たちに虫退治をしてもらいたい。」
大将は二人の顔を交互に見る。二人とも驚いて目をぱちくりさせる。虫退治も何も今、カブトムシを退治したばかりである。他に巨大な虫もいないのにどうしろというのだろう。
「どういう意味でしょうか?」
遼太郎は大将の言いたいことがわからず、聞き返した。
「ここ最近、巨大な虫連中がよく現れるだろう。」
大将は説明し始めた。
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