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「おのれ!」
大将は逃げることなく槍を構えて立ち向かおうとする。カブトムシに近付くため、馬を蹴り、前進しようとした。しかし、巨大なカブトムシを目にした馬は恐怖に慄き前進するどころか、踵を返して逆方向に走り出した。
「お、おい、待て。」
大将は手綱を曳いて戻ろうとするが、興奮した馬は言うことを聞かない。瞬く間に逃げる兵たちの間を駆け抜けていく。
「畜生め。」
大将は悪態をつくがなすすべもなくそのまま馬に揺られながら、振り向いてカブトムシの様子を伺う。
黒々とした殻をかぶったカブトムシはのんびりと歩を進めている。だが、一歩が大きいので、逃げる兵士たちに追いつかないまでも大きく引き離されることもない。
このままだと逃げる兵たちと一緒に村の中に入ってきてしまう。どうせなら人里離れた山に逃げればいいものをと、大将は苦々しく思う。
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