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男が一歩ずつ、足を引きずるように前へ進むと、カブトムシはピクリと角を動かした。頭が動いたかと思うと、すっと頭が前へ動く。
すると、男はぴょんと後ろへ飛び撥ねて、カブトムシから距離を置く。そのとたん、カブトムシは距離を詰める様に足を前へ動かした。
男はカブトムシに近付かれるとまた後ろに下がる。男が下がるとカブトムシはまた男に近付く。
それを何度か繰り返した挙句、ある時、男はくるりとカブトムシに背を向け、走り出した。カブトムシもそれに合わせて足を速めて、男を追いかけ始めた。
男は村の民家がある方ではなく、広い畑が続いている方へ進んでいく。畑には青々とした瓜がいくつもなっていた。その苗を踏まないよう土の部分を選びながら男は走る。
一方、カブトムシは足元の様子など気にせずに苗を踏み倒しながら畑を進む。周りの様子には目をくれる様子もなくまっすぐに逃げる男を追いかける。
その異様な様子に気付いたのか、逃げていた兵たちも足を止め、中には引き換えして様子を伺うものまでいた。
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