めぐちゃんのお母さんは白になりました

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めぐちゃんのお母さんは白になりました

 めぐちゃんはピンクが好きな女の子です。  アイスだってイチゴ味が好きです。ピンク色だから。  保育園でお絵かきをした時に、めぐちゃんはピンクのクレヨンで白い画用紙を全部ピンクに塗りつぶしました。それから大好きなお母さんの絵をそこに描きました。お母さんのお洋服はピンクにしました。  お母さんはそれを見て喜んでくれました。  それにお母さんは、めぐちゃんにはピンクのハンカチやワンピースを買ってくれました。ランドセルも、ピンクにしました。だから、お母さんもきっとピンクが好きなんだと思っていました。  でも、本当はお母さんがピンクのお洋服を着ているところを見たことがありません。いつも白いブラウスとねずみ色のスカートです。ハンカチも、髪に付けるバレッタも白いです。  保育園には毎日必ずお母さんが迎えに来てくれます。めぐちゃんはお母さんと手を繋ぎながら、家まで歩きます。 めぐちゃんは家まで帰る時、お母さんとお喋りをするのが楽しみでした。 「めぐちゃんが描いた絵、先生が褒めてたよ。よかったねえ」 「ピンクのお洋服のママだから!」 「ねえ。綺麗に描けたね」  めぐちゃんは満面の笑みを浮かべました。  でも、今日もお母さんは白いブラウスとねずみ色のスカートでした。 「本当は、ママはピンクのお洋服を着ないの? どうして?」  やっぱり気になるのでした。  するとお母さんはにっこりとして、首を左右に小さく振りながら答えるのでした。 「ママはピンクも好き。白はもっと好き」 「どうして?」 「白はね、自由なの」 「じゆう?」 「どこにでも行ける力をくれるの」  お母さんはめぐちゃんの小さな手を、ぎゅっと握っていました。 「鳥さんみたいに、どこにでも飛んで行ける力をくれるんだよ」 「そっかー! まほうつかいみたい!」 「魔法使い?」 「きょう、まほうつかいの絵本をみんなで読んだんだよ!」  めぐちゃんはいつも通り、保育園であったことをお母さんに話して聞かせました。  お母さんはそれを、目を細めて微笑みながら聞いていました。
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