僕は僕が先輩を待つのを待つ先輩を待つ

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 陸の端を、海に沿って歩いた。コンクリートの肌が粗くて、靴底のゴムを伝ってザリザリという音が足裏に響く。  海はもちろん穴ではないのに、たくさんのごみが捨てられている。暗闇にも種類があって、ペットボトルだったり、浮きだったりが浮かんでいるのが分かった。きっと沈んでいるゴミもいっぱいある。  思うに。  僕はその場にしゃがみ込んだ。  思うに、だが。  僕は油断していたのではないだろうか。先輩の不安を見逃していたのではないだろうか。 『私を待つ必要はないんだよ』  従業員出口の前でスマートフォンを弄んでいた僕に、帰り支度を済ませた先輩が言った。 「勝手に待ってるだけなので」  僕はそう言って、二人は同じ方向へ歩き始める。  背の低い先輩の歩幅に合わせて歩く。 「夕焼けを見ると、帰らなきゃという気持ちになるよね」 「僕は、夕方は習い事に向かう時間でした」 「空模様の話題で共感が得られないこともあるんだねえ」  先輩は驚いた顔で僕を見たが、すぐ前を見据えた。 「私はね」  カラスが鳴いていた。 「普通と違う。変なんだ。突然フッと糸が切れてしまう。楽しいものも幸せなものも壊してしまう」  小学校高学年くらいの女の子たちが、一緒に信号待ちをしていた。     
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