豆屋の春

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豆屋の春

随分長く借りている部屋で、豆屋を営んでいますが、僕はマリリンモンローが大好きで、壁にポスターを2枚はっています 一枚はお馴染みの、誘うような表情のマリリン もう一枚は、両肩に何も衣服が掛かって無くて、フワフワした羽毛で胸元を隠した、それはそれはとても魅惑的なポスターです 正面を向いた意思の強そうな瞳や、私はここにいるわ、と言わんばかりの口元、弛くカールした前髪も、彼女の美しさを一層引き立てています 春になりました 近所の川縁の桜が、今が盛りと咲き誇っています 珈琲豆の煙で、いつも煙たい思いをさせている彼女に、咲いた桜を見せてやるつもりで、最近は時々窓とカーテンを開け放しています まだ冷たい風が、部屋を通り抜けると、彼女も一息ついているのではないでしょうか 褪せないまなざしの彼女に、僕の姿はどう映っているのやら しばらく書けないままになっていましたが、また書こうと思います 開け放した窓から流れ出たサントスの香りに誘われたのか、お客様がいらっしゃいました さあ頑張って、焼きますか
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