豆屋のたくらみ

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僕が珈琲の世界に身を置いて35年になる。 お客様とのおしゃべりは、僕にとってかけがえのない時間だ。 好みの女性が来店すると、なんとか会話を弾ませようと、いつもに増して思案する。 豆屋歴3日だろうが3年だろうが、いくつになってもただの豆屋だけじゃない、+男の部分は諦めたくないのである。 そんな時、唐突に目の前の素敵な女性のお客様が 「私、小学生の時、お店の前を通って小学校に通っていました。 もう20年以上前なんだけど。 お店長くやっておられますよね。 大人になって珈琲が飲めるようになったら、買いに行こう、ってずっと思っていました。」 そうおっしゃってニコニコしながら、小首を傾げている。 20年前、僕は一体いくつだ? この女性の年齢より年上だったのか? などと慌てて計算してみるが、判然としない。 ただ、こうして、小学生だった彼女が素敵な女性に成長して、いつか大人になったら珈琲を・・ と思ってくれていたことが、とても嬉しい。
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