王道な学園での恋愛事情。

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夕飯の準備が出来たと呼ばれたので、いつも食事をしている部屋に行くと転校生はもうすでに来ていて王に何やら一生懸命喋っていた。それがいつもと何一つかわらなくて、明日帰れるのが嘘みたいだと思った。 「お。久しぶり。」 会長に気付いた転校生は片手をあげ笑った。会長も「相変わらずだな。」と笑い、ここに来る前とこの二人は何も変わっていなかった。 「やっと迎えに来たのかー。酷い飼い主だ。」 運ばれてきた料理をかき込みながら笑う転校生はいつか会長が迎えに来ることを知っていたようで、俺は首を傾げた。 「だって、お前をほっておくわけないだろ?」 当たり前のように言う転校生に会長へと視線を移すと会長はわざとらしく目をそらした。 「お前は…此処に残るんだろ?」 会長の問いに「話そらしたー!」と笑ったあと力強く頷き「あっちには俺の居場所ねーからな…。」と視線を落とした。 その意味が分からず聞きたかったけど、なんとなく聞いてはいけない気がした。あの時激昂した彼にはきっと聞かれたくない理由があるんだと思う。 それを今聞くべきではない。俺が聞くべきではない。 「彼の事は心配しなくて良い。こちらで不都合のないようしよう。」 今まで黙っていた王がしっかりと約束をしてくれた。俺はちっとも役に立たなかったけどいるだけでも違ったんじゃないかと思いたい。それをこれからはこの異世界で一人になるのだ。一人にしてしまうのだ。 俺はなんだか息子を親戚に預けるような気持になり、頭を深く下げた。 会長はそんな俺の頭を優しく撫で、転校生はわざわざ席を立って俺のところに来て頭を叩いた。痛かった。
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