王道な学園での恋愛事情。

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眠ったと思ったら起こされた。それほどぐっすり眠っていたのもあるし、まだ朝も明ける前なせいもある。 会長はさっさと着替えまだ目の覚めない俺の世話をせっせとしている。顔を拭き制服を着せ寝癖を直し…それはもう甲斐甲斐しく、下手に自分でやろうなんて思わないくらい完璧に。 そして手を引かれ連れてこられたのは、ここへ来て一度も踏み入れていない地下の怪しげな一室だった。重く頑丈そうな黒い扉を開けば何か黒魔術とかしそうな真っ黒で入るもの躊躇うような部屋だった。 不安になり会長にべったりとくっつき見上げると「そのままくっついてろ。」といい頷いた。本当に帰れるのだろうか…会長はここまで迎えに来てくれたし、今まで嘘なんか吐いたこともない。だからきっと大丈夫だ。ちらりと不安が見えてきたけど、それを消すように会長にぎゅっとしがみついた。 「大丈夫だ。戻ったらやりたい事とか楽しみな事とか考えてろ。」 会長の言う通り、戻ったらなことだけを考えようと目を閉じた。まずは会長の作った朝飯を食べよう。そして生徒会室に行って副会長と会計がサボって寝てたら起こそう…あとは庶務の双子が飼っているらしい犬を見せて貰って見分け着くように頑張ろう。そして会長に好きだって言おう。突然会えなくなって後悔しないように…。 「行くぞ。」 声が聞こえたと同時に身体が小刻みに揺れ足の下から地面が消えた。そしてあの時、階段から落ちた時と同じような浮かんだように感じたと思ったらそのまま着地した。 そんな運動神経が良いわけではない俺だけど、会長にしがみついていたのが良かったのか会長が凄いだけなのか普通に着地出来た。 閉じていた目を開ければそこはあの時落ちた階段の下で、会長が安心したように息を吐いたのが分かった。 「…戻ってきた?」 きょろきょろと周りを見渡す俺に「あぁ。」と答えた会長は「お帰り。」とそっと抱きしめてくれた。
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