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待ちに待った帰宅時間。和幸はコンビニに寄りワインと紙コップを購入した。今日こそはソファでくつろぎ、星空を見ながら酒を飲もうという算段である。
残業はあったが昨日よりは早いので、もしかしたら人に見られる恐れある。それでも決行する意思は揺らがない。十分そこらで切り上げるつもりであるし、ごみ捨て場の酒飲みなんて皆見て見ぬふりをするだろう。万が一職質を受けたら「ここで飲みたくて仕方がなかったんです」と正直に話してしまえば良いだけだ。恥ずかしいけどやましいことではないのだから。はやる気持ちを抑えきれず、足早に歩みを進めた。
ところが予想外のことが起こった。ソファにはすでに先客がいた。
見たところ若い女性のようだった。クッションにもたれかかるようにして座っている。自然と向かった視線の先でふくらはぎと膝小僧が街灯に白く照らされていた。太ももはぴったりと閉じられミニスカートの中は見えない。スーツ姿ということは社会人だろうか。両腕を枕にして静かに寝息をたてている。紅潮した顔はあどけなくも色っぽい。
見とれてしまった自分に気が付き、和幸は視線をそらした。何はともあれ、これでは今日も座ることはできなさそうだ。
「また次の機会に」
心の中でソファにそう言って、いつもの曲がり角を右に曲がった。
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