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十字路に再び静寂が訪れた。眠れるゴミ山の美女は一層眠りを深くする。
偶然にもこれまでその快眠を妨げる輩は現れなかった。しかし誰も彼もが見て見ぬふりをするわけがない。案の定、不審な者が彼女の前へやって来た。
それは曲がり角をムーンウォークするがごとく現れた。誰であろう、和幸である。
「まさかこのような淑女を夜道に放っておくつもり?」
妄想の中でソファに叱られて戻ってきた。当然無視することは可能だった。しかしいずれこの豪華なソファに座ることを考えると、それにふさわしい行動をしなければ何だか罰当たりなような気がして見過ごすことは出来なかった。
和幸は女性に声をかけた。肩をゆすり、頬をつついてみたりした。それでも女性は目を覚まさない。香水に紛れてアルコールの匂いがする。酔い潰れているようだった。
仕方がないので交番に連れていくことにした。和幸は思い切って女性を背負った。ここで意識を取り戻されたらと思うとヒヤヒヤしたが、幸か不幸か起きる様子は全くない。ふらふらと交番へ歩き出した。
「これで良いんだよな?」
和幸の問いに、今度は何の文句も出なかった。
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