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「・・・悪い」
「仕方ないさ、俺も詳しく説明しなかったし。飲み会で無闇に怖がらせて悪かったな」
道中、電柱や自販機の影や暗がりに怯えていた祐介。
悟られない様にと不安を押しとどめていたつもりだったが、傍から見ても挙動がおかしく見えていたのだろう。
「今のところは大丈夫みたいだ」
佐倉曰く、幽霊は大まかに二つのパターンに分類出来るらしい。
人や動物といった生き物に憑くモノ、場所や物に憑くモノ。前者は移動して憑いてくる事が多く、後者はその場に留まる事が多いという。
「問題は俺の家か」
「多分。入居時の条件はどうだった?」
「家賃はちょっと安かったけど、駅から徒歩15分だからだと思ったくらい。不動産屋も何も言わなかったし」
その15分は大した距離ではない。実際、祐介のアパートは目前に迫っていた。
階段のみの古いアパートで、外側に面した共用の廊下には防犯用の灯りが常時点っている。
此処が自宅だと佐倉に示すと、二階角部屋を目指す。
ふと、友人の家に訪れる事はあったが、自宅に人を招くのは初めてだと気付く。
何時もと違う行動は緊張するものだ。
これが恐怖に苛まれていなくても同じ様に感じるのだろうな、と脳裏に思いながら祐介は自宅への扉を開いた。
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