【第一章徒歩15分のアパート】第1話

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【第一章徒歩15分のアパート】第1話

この春、祐介は無事に大学に合格し、順風満帆な学生生活を送っていた。 目まぐるしい講義も、一人暮らしの為に決めたアルバイトもこなし、 半分幽霊部員になりつつある歴史研究会のサークルの飲み会も、そこそこ顔を出すサイクルが初夏に向けて出来上がりつつある。 「飲んでるか?」 その日も、アルバイトがない日だったので誘われた飲み会にたまたま顔を出しただけのはずだった。 「佐倉こそ、酒の臭いがしない」 辺りにはアルコール独特の臭いが漂っているが、目の前の男は何処吹く風とばかりに、へらりと笑う。 「俺はいいんだよ。家に帰って調べたい事あるし」 佐倉は殆ど飲みサークルと化している「歴史研究会」では珍しく真面目に活動している男だ。 「それよりさ」 祐介が手持ちの飲み物を口にしながら目をやると、さっきまで緩い表情をしていた佐倉は落ち着きなく何かを告げようと言葉を選んでいるのがわかる。 新生活も落ち着いてきたし、浮いた話も周りでもよく聞く。 佐倉も、その口であろうと内心ほくそ笑んでいると予想外の言葉が掛けられた。 「最近、変わった事ない?」 心臓が心なしか早く鼓動を刻む。 祐介は表情が固くなっているのも気付かず、無理やりな笑みを作った。     
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