1-1.目が覚めたのは、お屋敷

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 私に至っては、【チャロナ=マンシェリー】と言う名札と一緒に孤児院に押し付けられたらしい孤児。誓って、このような豪邸で過ごせる身分ではない。  だから、あの崖下近くで、運良くそう言ったご身分のどなたかに拾っていただけたと思ったのだ。 「……勝手に出ちゃいけないだろうし、いっ、た!?」  起き上がる時はなんともなかったが、少し首を動かしたら頭に鈍痛を覚えた。  こめかみらしいとこを触ると、何故か柔らかな包帯が巻かれている。親切な屋敷の主人は、使用人に怪我の手当てまでさせたのだろう。  ありがたくも思うが、同時に申し訳ない。  スコールや崖から落ちた後で、私自身酷く汚れてただろうから……その方の服もかなり汚してしまったはずだ。  それと荷物らしきものも近くに見当たらないから、異世界あるあるネタならば検分されてるのかも。  それくらいは、千里の記憶よりチャロナの記憶がまだまだ多い私の知識では常識の範疇。  素性や身分を知るのに、荷物は大事な証拠品だから。  コンコンコン  考え込んでるところに、ノック音が聞こえてきた。  返事をしていいか迷ったが、ひょっとしたら声が外に聴こえていたかも。寝てる相手になら、ノックする必要もあまりないだろうから。  私は、少しだけ深呼吸をしてからゆっくり口を開いた。 「はい、起きてます」 「あら、良かったわ!」  声と共に扉が開くと、そこに居たのはハウスメイドらしい使用人の女性。
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