875人が本棚に入れています
本棚に追加
楽しかったなあ、と龍大は、大きなため息をついた。
聖のアパートは古くてボロくて狭かったけれど、自由が詰まっている気がした。
聖は、一人暮らし結構大変だけどな、と言っていたけれども、なんでも自分の自由にできる生活なんて、羨ましすぎる。
何もかも縛られている自分とは大違いだ。
今日だって、友達の家に遊びに行くから護衛はいらない、と言ったのに、結局、聖のアパートの前にはずっと黒塗りの車が停まっていた。
中学生男子に向かって、夕方6時に「お迎えに上がりました」ってピンポン押すのどうなのよ?
俺は、どっかのお嬢様かっての。
そうやって迎えに来られて、しぶしぶ帰宅すれば、家にはまた後継者教育なるめんどくさいことが山程待ってるし。
こんな家、出て行きてえ。
家出して、聖のアパートに転がり込もうか。
聖だって、一人は大変って言ってたから、俺が一緒に住んだら喜ぶんじゃね?
聖と二人で住む。
なんてワクワクする想像だろう。
聖はちょっとちっちゃいから、電球の交換とか、棚の上のもの取るのとか、俺がやってあげるんだ。
そんで、そんで、朝から晩まで一緒にいられる。
何して遊ぼうか。
ゲームしたりして、あっ、聖んちにはゲーム無いから、家出のとき俺が持っていかないと。
あとは、宿題も一緒にやればめんどくないし。
俺、料理とかできねえけど、聖できんのかな。
教えてくれっかなぁ…。
聖にばっかやって貰うの悪ぃしな。
あー、なんかそれって、俺と聖で同棲してるみてぇ。
………
………
………
いや、ナイナイ。
俺は兄貴とは違ぇし。
ホモじゃねえっての。
龍大は、そこで、ブンブンと頭を振った。
同棲じゃなくて、同居…いや、シェアハウス?
でも、俺、家賃払わねえ、っつか払えねえしな…。
聖のヒモ…とか、んなカッコ悪いの、ぜってぇ嫌だ。
はあ、と彼はため息をつく。
楽しい妄想が終わってしまった。
現実はそんなもんだ。
中学生はまだ子どもで、自分でお金を稼ぐこともできない。
そーいえば聞きそびれたけど、聖の家賃とか生活費はどうしているんだろう?
最初のコメントを投稿しよう!