おまけ

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中学の卒業式のときは、高校の入学祝いで二輪の免許取らせて貰うんだ!と喜んでいた聖だ。 その頃、龍大の遠距離片想いは、まだ継続していた。 聖は想定以上に奥手で、月に3、4回しか会えない龍大は、押し過ぎて聖に嫌われたくないという思いから、自分の悶々とする想いを押し込めて、友達としての関係を継続するのに必死だった。 高校に入って聖は、宣言どおりバイクの免許を取り、中古で買って貰ったらしい400ccのバイクを乗り回し始めた。 バイクに夢中になる聖に小さく嫉妬した龍大は、自分も二輪の免許を取ることにした。 免許を取って乗るようになると、二人でツーリングに出掛けられるようになり。 楽しそうな聖が可愛くていとおしくて、龍大も次第にバイクにのめり込むようになっていった。 高校の三年間、そんな感じで龍大と聖はひたすらにバイク仲間としての絆を深めるあまり、龍大の恋は少しの進展もなかったのである。 本来なら、ホレたハレたで大騒ぎする年頃だというのに。 そして。 「大学の入学祝いで、大型二輪、限定解除させて貰うんだ」 電話の向こうで、聖がはしゃいだ声を上げている。 「タツも大型取んないの?」 ああ、もう、相変わらず、可愛いやつだよな。 龍大は、耳を擽る聖の声に、思わず口許が緩むのを感じる。 「大型もそのうち取るけどな、先に車の免許かな」 出逢った頃は、まだ子どもの域を抜けきれていなかった二人の声も、今は安定した大人の低音だ。 特に、龍大の声は、その体躯に相応しい腹に響く重低音で、聞いていると聖は時折、なんだかソワソワする気持ちになる。 「つうかさ、それより先に、住むとこ決めねえとだし」 この春、高校を卒業する二人の進路は、同じ大学だ。 二人とも、聖の地元の国立大に進学を決めていた。 龍大は、この春から親元を離れて一人暮らしをすることになっている。 「大丈夫、そのへんは桜田不動産に任せとけって」 超優良物件取っておくからさ。 聖は楽しげに笑う。 その笑い声に再び耳を擽られて、龍大はため息をつきたくなった。 お前の笑い声だけでヌけそうな俺なのに、よくまあ6年も我慢してるよな。
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