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楽しかったなあ、と龍大は、大きなため息をついた。 聖のアパートは古くてボロくて狭かったけれど、自由が詰まっている気がした。 聖は、一人暮らし結構大変だけどな、と言っていたけれども、なんでも自分の自由にできる生活なんて、羨ましすぎる。 何もかも縛られている自分とは大違いだ。 今日だって、友達の家に遊びに行くから護衛はいらない、と言ったのに、結局、聖のアパートの前にはずっと黒塗りの車が停まっていた。 中学生男子に向かって、夕方6時に「お迎えに上がりました」ってピンポン押すのどうなのよ? 俺は、どっかのお嬢様かっての。 そうやって迎えに来られて、しぶしぶ帰宅すれば、家にはまた後継者教育なるめんどくさいことが山程待ってるし。 こんな家、出て行きてえ。 家出して、聖のアパートに転がり込もうか。 聖だって、一人は大変って言ってたから、俺が一緒に住んだら喜ぶんじゃね? 聖と二人で住む。 なんてワクワクする想像だろう。 聖はちょっとちっちゃいから、電球の交換とか、棚の上のもの取るのとか、俺がやってあげるんだ。 そんで、そんで、朝から晩まで一緒にいられる。 何して遊ぼうか。 ゲームしたりして、あっ、聖んちにはゲーム無いから、家出のとき俺が持っていかないと。 あとは、宿題も一緒にやればめんどくないし。 俺、料理とかできねえけど、聖できんのかな。 教えてくれっかなぁ…。 聖にばっかやって貰うの悪ぃしな。 あー、なんかそれって、俺と聖で同棲してるみてぇ。 ……… ……… ……… いや、ナイナイ。 俺は兄貴とは違ぇし。 ホモじゃねえっての。 龍大は、そこで、ブンブンと頭を振った。 同棲じゃなくて、同居…いや、シェアハウス? でも、俺、家賃払わねえ、っつか払えねえしな…。 聖のヒモ…とか、んなカッコ悪いの、ぜってぇ嫌だ。 はあ、と彼はため息をつく。 楽しい妄想が終わってしまった。 現実はそんなもんだ。 中学生はまだ子どもで、自分でお金を稼ぐこともできない。 そーいえば聞きそびれたけど、聖の家賃とか生活費はどうしているんだろう?
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