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「なあ聖、明日も遊びに来ていいか?」
その日は金曜で、当然土日は学校が休みだ。
いつも、学校から帰るときになんとなく遊びに来るという流れになっていたから、学校のない週末前、帰り際に恐る恐るそう切り出した龍大だった。
聖は、少し首を傾げた。
「明日はちょっと無理」
用事があるから、と彼は肩を竦める。
途端に激しく落胆した顔をする龍大を見て、お前さ、俺のことめちゃめちゃ好きだろ、と笑った。
聖が深い意味なく「好き」なんて言葉を使っていることはわかっているのに、なんとなく龍大はドギマギする。
うるせ、と小さく呟いて、わけもなく喉の乾きを覚えて唾を呑んだ。
そんな龍大には、全然気づいていない聖は、彼を更にドキドキさせる全開の笑顔で言った。
「明後日なら別にいいけど」
今日のゲームのリベンジすっから。
勝ち逃げとか許さねえかんな、ちゃんと来いよ。
そんなふうに送り出されて、龍大はウキウキしていた。
学校帰りの僅かな時間だけでなく、休みの日ならずっと一緒にいられるのだ。
聖の笑顔の隣に。
しかし、そのウキウキした気持ちは、彼の帰宅を待ち構えていた父親に、ペシャンコに叩き潰されてしまう。
「龍大、お前最近修行に身が入ってないらしいな?」
父親はジロリと彼を見る。
「友達と遊ぶのも悪いことじゃないが、やるべきことをやらないでいると、お前自身が後悔することになるぞ?」
あんなくだらねえこと、やんなくて後悔するなんてありえねえし。
武術とか体術とか習ったところで、今どき喧嘩なんて誰もやんねえし。
性技に至っては何に使うんだよ、ただエロいことしてるだけじゃん。
射撃とかはかっけぇけど、ドラマじゃねえんだから、そうそう銃なんか持ち歩けねえし。
中学の勉強だけで手一杯なのに、その他経済だの中国語だのなんだのなんか頭に入んねぇっつの。
ヤクザがプログラミングとかも意味わかんねぇし。
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