2.

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なんて答えよう。 龍大は、思わず一歩後退る。 聖に軽蔑されたり嫌われたりしたら。 笑顔を見るどころか、話しかけてすら貰えなくなったら。 そんなこと、想像するのも怖い。 「タツ?」 聖が不審そうな顔をしている。 チッ、と小さな舌打ちが聞こえた。 聖の父親が、こちらを睨んでいる。 が。 「俺が凶悪な顔してっから、お前んこと誘拐するとでも思ったんじゃねえか?」 その口をついて出たのは、どうやら助け船のようだ。 聖がそれに納得するかどうかは別にして。 そうやって一応窮地を救っておきながら、そのひとはジロジロと品定めするような視線を龍大に投げる。 「身体のデカさの割に弱すぎだ。それで聖を守りてえとかふざけたこと思ってんなら、もっと鍛えろっての」 彼は、辛辣な台詞を吐いた。 「だいたい、護衛だかなんだか知らねえけど、腰巾着に喧嘩の肩替わりさせようって根性、気に入んねえ」 市敬の鋭い瞳が凍りつくように冷ややかになる。 そして。 一歩、龍大のほうに近寄った。 ぐいっと胸ぐらを掴んで、自分の口許に龍大の耳を引き寄せる。 相当苛立ってはいるけれども、それでも、聖に聞こえないようにしたのだろう。 低い声で囁いた。 「どこのヤクザの御曹司か知らねえけどな、てめえごとき根性のねえガキが俺の息子に半端に手ぇ出してみろ、二度と男も女も抱けねえ身体にしてやっからな?」 聖に手ぇ出すんなら、キチンと覚悟を決めて、俺に筋を通してからじゃねえと許さねえ、わかったな? 父や兄以外の男に恐怖を感じたのは初めてだった。 龍大は、突き飛ばすように胸ぐらを離されて、後ろによろめくように何歩か下がった。 そのひとは、全部見透かしている。 龍大が聖に抱いている劣情も、どうしていきなり彼に殴りかかったのかも。 その上で、釘を刺してきたのだ。 しかも、聖には彼の想いを気づかれないように配慮するという余裕まで見せて。 聖は、そんな父親と友達を、まだ納得いかなそうな顔で見ている。 しかし、父親がもう振り返りもせずスタスタとアパートのほうに向かうのを見て、慌てて後を追いかけた。 「悪ぃ、とにかく今日はその…あのひとと用事があるから、また明日な、タツ」
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