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自宅に戻った龍大は、世話役の男に、勝手に喧嘩騒動を引き起こそうとしたことや稽古をサボって抜け出したこと等々こってり絞られたが。 彼は、文句を言わずにその説教を聞いた。 そして、人が変わったように、サボっていた武道の稽古を黙々とこなした。 聖の父親に言われたことが響いたのだ。 デカい図体の割に弱い。 腰巾着に喧嘩の肩替わりをさせる根性無し。 そうだ、あいつの言うとおり、今のままじゃ聖の横に並ぶのに、全然釣り合わねえ。 めんどくせえだのくだらねえだの、役に立たねえとか決めつけて、やりたくないことを全部家のせいにして、逃げてばかりいた。 認めたくはないけれど、父に言われたとおり、武道の鍛練をサボっていたせいで後悔するはめになっている。 聖は敏捷で運動神経もいいけれど、華奢で小柄なあの体格だ。 今回は完全な誤解だったものの、今後、誰かに襲われたりなんてこともあり得ないことじゃないのかもしれない。 男だから、そんなことはなかったとしても、或いは目付きの鋭さが災いして喧嘩に巻き込まれたり、なんてこともあるかもしれない。 そのときに、今回みたいに守れませんでした、じゃ済まないのだ。 聖が目の前で傷つけられたりするのを、地面に転がって眺めているなんてことには、絶対になりたくない。 聖の父親は、強くてかっこよかった。 聖のあの、誰にも屈しないような強い瞳は、あの父親譲りなのだ。 そう、聖ならば。 くだらねえ漫画みてぇ、と笑い飛ばしながらも、きっと淡々と自分に与えられた責務は果たすだろう。 その上で、自分の道を掴み取るために戦うのだ、あの凛としたクールなひとなら。 この家から自由になりたい。 だけど今のままじゃ、単なる逃げだ。 本当に自由になりたいのなら、やるべきことをやって誰にも文句は言わせず、それでも家から出たいと戦うのが筋だ。 そうじゃなきゃ、聖の隣に並んで立てねえ。 あの父親に、認められねえ。 龍大は、ギリギリと歯を食い縛った。
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