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なんだかんだで、結局、体育の授業をサボって屋上にいる二人だ。 「んで、二週間も休んでどーしたんだよ?」 龍大は、この二週間、心配で仕方なかったのだ。 彼は親に与えられたスマホを持っているが、聖は当然そんなものを持っていないから連絡も取れないし、担任に聞いても「家庭の事情だ」と言うばかりで、何も教えてくれなくて。 その家庭の事情とやらで、聖がそのままいなくなってしまうのではないかと、気が気ではなかった。 「うん、まあ、母さんがいなくなってさ、さすがにちょっとヤバい感じになって、いろいろあって」 聖は肩を竦めてそう言うと、ニカッと笑って龍大を見た。 「俺、いなくて、さみしかったわけ?」 「えっ、あ、うん」 不意にそんなことを聞かれたから、思わず素直に頷いてしまうと。 逆に驚いた顔の聖に、慌てることになる。 やべぇ、さみしいとか、子どもっぽいと思われたか。 聖には、子どもっぽいとかカッコ悪いとか思われたくない龍大だ。 「あ、いや、その、戻ってきたってことは、お前の母さん帰って来たんだな」 しどろもどろに話題を変えようとして、更に失敗したことに気づく。 聖が小さくため息をついたのだ。 「帰ってきてねえんだよ、それが」 「えっ…じゃあ、お前、今どーしてんだよ?どこ住んでんの?」 触れちゃいけない話題だったか、と気を回すよりも先に、気になることをズバリと聞いてしまうところらへんが、まだ子どもなんだけれども。 「住んでんのは前と同じアパートだけど、なんつーか、一人暮らしみたいなもん?」 これ、学校には内緒だから、あんま他の奴にペラペラ言うなよ。 「一人暮らし?!マジで!いいなあ!!」 聖の釘刺しを聞いているのかいないのか、龍大はコーフンした声を上げた。 キラキラと瞳を輝かせて、聖の肩を掴む。 「なあ、今日遊びに行っていいか?」 自分の家でも外でも遊べないなら聖の家はどうかと思って、以前にも何度か遊びに行ったらダメか、と聞いてみたことはある。 しかし、いつも、出勤前の母親がバタバタしてるからダメ、とすげなく断られていた龍大だ。 一人暮らしなら、もうそんな問題はないだろう。 「別にいーけど、散らかってんぞ?」 「そんなん気にしねえよ!約束な?」
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