14-贈物

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クリスマスイブは、夫の両親の家へ、クリスマスは、家族だけでやりたいとのお願いを夫は、いいね!なるべく早く帰るよと言ってくれていた。 朝から、ビーフシチューをコトコト煮込む。 マッシュポテトをリースに見立てたサラダ。 後は、チーズフォンデュのクリスマスメニュー。 私がフランスパンを買い物に出かけてる間に、何か届いたようで帰るとすぐに、優真が「パパになんか届いたよ~」と持ってきた。 レターパックプラスで届いていた宛先は夫の名前、ご依頼主名は、”市村宝子(たかこ)”とあった。 ドクンッ、動悸が激しくなる音がする。 間違いない、あの”須藤宝子”だ。 旧姓で送ってきている。 中味は、振ってもカサカサと動くくらい、軽くて薄い。 普通郵便やレターパックライトの郵便ポストへ届くものでなく、対面の受領印での受け取り方法になるものを郵送にワザと使った? そうだとしたら、夫は会社に行っているのだから、受け取りが私になるように仕組んでいるとしか思えない。 どうしよう...。 私に見ろ!との宣戦布告な気がする。 それにまんまと引っ掛かっていいのか…。 これは封を開けたら、見てないなんてごまかしはきかないし...。 見たら、今日のクリスマス会を笑って過ごせなくなるかもしれない。 自らの行動で未来は変わる。 考えて考えて、考えに考えた。 今日は開けない、夫にも渡さない。 開けるか、開けないで夫に渡すか、どちらにしろ明日にしようと。 今日は、自分の為にも楽しむ。 それは、あの人への嫌がらせにもなるんだから。 幸せが逃げていかないように、ピンキーリングを夫につけてもらって、それから見よう。 料理をして楽しみにしていた夜を、"宝子"からの何かが届いただけでジワジワと(やみ)が広がっていく。 この日に届くようにしたのも、”宝子”の意図しか感じられない。 あなたにも家庭があるのに。 今日は、何をしていて、何を考えているのだろう?
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