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私の中で、ゾワゾワッと嫌な思いが湧き上がってくると、同時にあの日のことが走馬灯のように頭の中に駆け巡る。
あの女の年齢は私と同じくらい?
少し上のように感じたけれど。
長い髪を綺麗に巻いて、ブランドバックを持っていた。
洋服はどんな感じだったか…
綺麗にしていたと思うが、それよりも、髪を触った時の右手薬指の細いゴールドのリングに目がいってしまった。
小さな小さな丸が連なったもので、すぐに折れてしまいそうなくらいに細かったから。
だからという訳ではないが、美人なのに、なんとなく幸が薄そうな雰囲気が印象的だった。
こんな展開は予想もしていなかったのだから仕方がないが、細すぎるリングに目を奪われてる場合じゃなかったのかもしれない。
もっと、上から下までじっくり見ておけば良かった。
落ち着いてよく考えたら、おかしい点が沢山ある気がする。
あの日のモヤモヤの原因でもある、夫の言ってることと彼女の言ってる事が全く違うってこと。
本当にお金だけを返しにくるのなら、それこそ茶封筒にでもいれて私に預けてもいいだろうし。
タクシーを並んでる時にお金がなくて借りて、カードを預けたからなんて、よくもそんな嘘がポンポンと咄嗟に出てきたものだ。
今考えると呆れてしまう。
前に並んでいる夫にお金を借りたなんて嘘、カードを渡したなんて嘘、どれも嘘ばかりじゃないか。
そもそもタクシーの料金なんてカードで払えばいいのだから。
そして、家を知っていること。
家は、分かりやすい目印があるわけでもない、大通りから中に入り組んだ住宅街の中にある。
一緒にタクシーで帰宅して、次に送る先があるのであれば、夫は家の前まで来ず、大通りで降りるのが普通だと思う。
もし、夫が家の前で降りたと仮定しても、入り組んだ住宅街で着いた場所を覚えているものだろうか?
しかも夜中の真っ暗い中。
余程この近辺に詳しい人でない限り難しいと思う。
何で彼女は、家に来れたのか…。
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